世界一、孤独な子どもを育てる国になった日本~親子関係・愛着問題を考える

こんにちは、高橋リエです。

いま、人を好きになれない、人と親しくなると、なぜか遠ざけてしまう、恋愛するのが面倒くさい、という若い人が増えているのですね。
これは、心理学の用語で言えば、「愛着」の問題です。そして、日本には、愛着の問題を抱えた人が、いまたくさんいます。
2017年10月に出版した『恋愛低体温症』は「愛着」をテーマに書いていますが、今日はこの「あとがき」から一部、ご紹介したいと思います。

愛着の問題は、乳幼児期の子育てに関係する

愛着というのは、乳幼児期の親子関係でできるもので、最も重要なのが、生後8か月から1歳半くらいまで、と言われています。愛着の問題をかかえる人が増えているということは、いまの日本には、乳幼児期の子育てのあり方に問題がある、ということです。

その理由のひとつは、戦後の日本の子育てが、ゆがんだかたちで西欧化してしまったことにある、と感じています。昔ながらの日本の子育ては、赤ちゃんが泣いたら、おんぶや抱っこをして安心させるのが普通でした。それが、戦後の子育てでは「抱きグセ」がつくとして、安易に抱き上げなくなりました。抱きグセがつくと、泣くたびに抱っこしなければならず、親が大変だから、やめておきなさい、ということです。

子ども中心の子育てから、親の都合中心の子育てに、変わったのです。

戦後日本の子育ては、『スポック博士の育児書』のもと、子どもより親の都合を優先してきた


その根拠となったのが、1966年に日本語版が出版された『スポック博士の育児書』です。この本は、戦勝国アメリカの合理主義こそ見習うべきという、戦後の強力な洗脳のもと、日本で大流行して、子育てを一変させました。
スポック博士は、次のように主張しました。

常識のある父親(あるいは母親)なら、自分を犠牲にしてまで、こどもにつき合おうとは、おもわないはず。

3ヶ月になったら、……たとえば寝る時間がきたら、やさしく、しかしはっきりと、もう寝なければいけない。そして、お母さんはそばにいられない、ということをわからせ、すこしぐらい泣いていても、放っておきます。

2才ぐらいになると、ひとりでベッドから出てきて、親のベッドへきたがります。こんなときは、……運動具店からバドミントンのネットを買っていらっしゃい。……こどもを(ベッドに)入れたらネットをかぶせて、こどもの手のとどかないベッドの下で、数カ所を、これもテープか紐でスプリングにしっかり結びつけられるようにしておきます。

ベンジャミン・スポック.『スポック博士の育児書』.暮しの手帖社,1966
ベンジャミン・スポック.『スポック博士の育児書』.暮しの手帖社,1966
ベンジャミン・スポック.『スポック博士の育児書』.暮しの手帖社,1966(絶版)

なんと、生後3か月の赤ちゃんを、泣いても放っておきなさい、とか、2歳の子どもを、バドミントンのネットで拘束して、親のところに行きたくなっても、ベッドから出られないようにしなさい、と言っているのですから、これはほとんど虐待です。
スポック博士は、伝統的な育児を、親を縛るものとして否定し、「親が楽をしようと思ったとおりやってもいい。子供は自然に育つ」と説いたのです。そして、日本人は、諸手をあげて、それを受け入れてしまいました。

こうして、戦後日本の子育ては、子どもより親の都合を優先するようになったのです。
それは、経済復興を最優先する、国の都合にも合致していました。

明治初期の日本は、親子間の愛着が形成される子育てを行っていた

いっぽう、明治初期に、東京大学で生物学を教えていたエドワード・S・モースは、著書『日本その日その日』に、当時の日本の子育てをこう描いています。

世界中で日本ほど、子供が親切に取り扱われ、そして子供の為に深い注意が払われる国はない。
ニコニコしている所から判断すると、子供達は朝から晩まで幸福であるらしい。
彼等は朝早く学校へ行くか、家庭にいて両親を、その家の家庭内の仕事で手伝うか、父親と一緒に職業をしたり、店番をしたりする。
彼等は満足して幸福そうに働き、私は今迄に、すねている子や、身体的な刑罰は見たことがない。
小さな子供を一人家へ置いていくようなことは決してない。
彼等は母親か、より大きな子供の背中にくくりつけられて、とても愉快に乗り廻し、新鮮な空気を吸い、そして 行われつつあるもののすべてを見物する。
日本人は確かに児童問題を解決している。
また、日本人の母親程、辛抱強く、愛情に富み、子供につくす母親はいない。

エドワード・S・モース.『日本その日その日』.平凡社 ,1970

明治初期の日本の子育ては、モースいわく、欧米より先んじて、「児童問題を解決して」いたのです。
実際、当時の日本の育児は、現在の最新の育児理論からみても、じつに理にかなっています。

残念ながら、日本は、この貴重な先人の知恵を、捨ててしまったのですね。幼いとき、いつも母親におんぶされて、尊重され、親切にあつかわれ、辛抱強く、愛情深く、尽くされて育つことで、その子は喜んで大人に協力する、幸せな子どもになります。そして、長じてからは、幸せな大人になって、我が子を大切に慈しんで育てる、愛情深い親になるのです。

※さらに前、 江戸時代末期の日本 については、私のAmebaブログに書きましたので、興味のある方は、ご覧ください。

かたや、戦後の日本の子どもたちは、泣いても、抱っこもおんぶもあまりしてもらえず、1歳にもなれば、しつけと称して親に口うるさく叱られ、幼稚園にあがれば、ほかの子と比較されて、つねに親から評価の目線で見られます。こんな幼児期を過ごせは、自己肯定感が低くなり、生きることが苦行となってしまっても、不思議はありません。

15歳の3割が「孤独を感じる」と回答している今、大人優先から子ども優先の子育てに戻しませんか

15歳の3割が「孤独を感じる」と回答している今、大人優先から子ども優先の子育てに戻しませんか

2007年2月、国連児童基金(ユニセフ)は、先進国に住む子どもたちの幸福度にかんする調査報告を発表しました。それによると、子どもの意識をまとめた項目で、「孤独を感じる」と答えた日本の15歳の割合は、29.8パーセント、約3割で、ダントツの1位でした。それに続くのは、アイスランド(10.3パーセント)、ポーランド(8.4パーセント)で、日本は、調査対象の25か国のなかで、ずばぬけて高かったのです。
百年前に、世界一幸せな子どもを育てていた日本人が、いまや世界一、孤独な子どもを育てているのです。
そう考えると、胸が痛みますよね。

スポック博士は、晩年に、自説が誤っていたことを認めて、謝罪したそうです。勇気ある行動だとは思いますが、謝ってすむことではないのでは、とも思ってしまいます。(現在日本語で読める書籍は1997年版です。ベンジャミン・スポック.『最新版 スポック博士の育児書』.暮しの手帖社,1997)

そんなわけで、戦後の日本は、驚異的な経済復興を成し遂げましたが、それは子どもたちの犠牲のうえに成り立っていたとも言えるのかもしれません。おかげで、いまや、こんなに豊かな国になりました。
そろそろ、大人優先ではなく、子ども優先の子育てに、戻す時期ではないでしょうか。
社会全体が、子どもと母親をもっとも尊重して大切にしてくれる、そんな世の中になってほしいと、切に願っています。

※当記事は、高橋リエがカウンセラーとして活動を始めた当初より綴っている、Ameba(アメーバ)ブログ 「毒親育ちのアダルトチルドレンが自由になるカウンセリング」から、人気記事を再編集して公開しています。

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オフィシャルYouTubeでは、10分前後で「毒親育ちさんのための子育て講座」や「毒親講座」を配信しています。
『幼い子って親より賢いんです』は、愛着を形成する乳幼児期の子どもについて解説し、当記事でご紹介した内容もご説明しています。
幼い子供は、脳波がゆっくりで、大人とはまったく異なる存在です。意識がとても深いので、なんでもお見通しで、よくわかっています。そんな賢くて尊い子供たちに、愚かな大人が上から目線で指示命令するなんて、とても失礼だし、まちがってるんですよ、というお話をしています。
ぜひご覧ください(音声だけ聴き流していただければ幸いです)。
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